アジアでの新しいサルコペニアの診断基準AWGS2025

 2025年11月4日にアジアでの新しいサルコペニアの診断基準(AWGS2025)の論文が、Nature Agingに公開されました。AWGS2025によるサルコペニア診断基準の特徴は、低身体機能が診断基準から除外されたことと、50~64歳のサルコペニア診断のためのカットオフ値が新設されたことです。今後のサルコペニアの診断には、AWGS2019ではなくAWGS2025を使用してください。

Chen, LK, et al. A focus shift from sarcopenia to muscle health in the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 Consensus Update. Nature Aging 2025. doi.org/10.1038/s43587-025-01004-y

https://www.nature.com/articles/s43587-025-01004-y

 サルコペニアのスクリーニングは、AWGS2019と同様に2つのセッティングに分けています。プライマリケアまたは地域の予防医療の現場では、65歳以上(またはMuscle Healthに懸念のある 50〜64歳)、不動状態または⾝体機能の低下、嚥下困難または嚥下機能障害、栄養不良︓低体重(BMI <20kg/m²)または体重減少(6ヶ⽉で2kg以上)、急性または慢性の消耗性疾患、⾃覚症状または医師の所⾒による筋⼒低下、あるいは低⾝体機能といった危険因子がある場合、評価に移行します。また、下腿周囲⻑が男性34cm未満、女性33cm未満、SARC-Fが4点以上、SARC-Calfが11点以上、指輪っかテストで異常といった症例発見がある場合に、評価に移行します。一方、急性期から慢性期の医療または臨床研究の現場では、⾝体機能の低下または制限、意図しない体重減少、抑うつ気分、認知機能障害、繰り返す転倒、栄養不良、慢性疾患(⼼不全、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、慢性腎臓病など)といった臨床的状態が症例発見として見られる場合、評価に移行します。

 サルコペニアの評価では、まず握力を測定します。65歳以上のカットオフ値は男性28kg未満、女性18kg未満、50~64歳のカットオフ値は男性34kg未満、女性20kg未満です。握力低下を認める場合には、サルコペニアの可能性あり(低筋力)と診断します。一方、筋⼒は正常ですがサルコペニアの危険因⼦が陽性の場合、サルコペニアのリスクありと診断します。

 サルコペニアの確定診断では、次に四肢骨格筋量を測定します。測定方法はDXAもしくはBIAです。DXAでの身長補正のカットオフ値は、65歳以上で男性7.0kg/m2、女性5.4kg/m2、50~64歳で男性7.2kg/m2、女性5.5kg/m2です。DXAでのBMI補正のカットオフ値は、65歳以上で男性0.73、女性0.52、50~64歳で男性0.80、女性0.55です。BIAでの身長補正のカットオフ値は、65歳以上で男性7.0kg/m2、女性5.7kg/m2、50~64歳で男性7.5kg/m2、女性5.7kg/m2です。BIAでのBMI補正のカットオフ値は、65歳以上で男性0.83、女性0.57、50~64歳で男性0.90、女性0.63です。日本人ではBMIが24以上の場合、身長の2乗での補正では低骨格筋量と診断されることがほとんどないため、BMI補正のカットオフ値が新設されました。低筋肉量+低筋力の場合に、サルコペニアと診断します。


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